手の震え
実際にマジックを演じようとしたとき、手が震えた経験は、ほとんどの方があるのではないでしょうか?
練習している時は何ともないのに、実際に演じようとすると震えます。
よく知っている人なのに、震えます。
やりなれているはずのマジックも、状況や環境が違えば震えます。
もちろん、私も経験があります。
“震え”には気持ちの部分もあると思います。
“焦り”や“不安”も震えの原因になると思います。
練習不足の不安…
上手く演じれるかの不安…
環境の違いの焦り…
想像と違うお客さんの反応に対する焦り…
今回は、私なりに“震え”について書いてみたいと思います。
まず、手が震えている事に自分が気がついたとき、出来る限り悟られないようにしなくてはなりません。
そんなときは、ジッと手を止めずに、身振り手振り等を入れて話をしながら手を動かしておきましょう。
動かしていると、とりあえずは震えているのは見えづらくなりますし、話すことによって、お客さんの“手元に対する集中”が緩和するので、気持ち的に楽になります。
昔にした体験ですが、喫茶店で練習したマジックを演じようとしたとき、横にも観客がいました。
そのマジックで使う技法の中で、どうしても横からは丸見えになってしまう事に途中で気がついて焦ってしまい、手が震えてしまった事があります。
このときから私は、練習する時は、鏡に対して前を向くだけじゃなく、横を向いてみて練習することも加えました。
“震え”は、気持ちによって大きく左右するところがあります。
仕方のないところもありますが、前もって“心の準備”は出来るので、そのポイントをいくつか書いておきます。
◇演じるマジック、使う技法の弱い角度などを知り、そこをかばう対策を練っておき、焦る要因を減らす。
◇マジックを演じた時のお客さんの反応を、想像するのはいいが、断定してはいけない。
◇最初に難しいマジックを演じない。簡単かつ自分のペースに持っていけるマジックを演じる。面白系のマジックでもいいですが、必ずウケる物にして下さい。ここで外すと震えが止まらなくなります。不思議系が無難でしょう。
◇心の中に言い訳を作っておく。例えば「このマジックは難しいから…」、「寝不足だし…」、「最近練習する時間がなかったし…」、お酒を飲んでいたら「お酒が入っているから…」など。気持ちの逃げ場があれば、少し楽になります。
◇震えがお客さんにも見えてしまったときの、言葉の言い訳も作っておくといいでしょう。例えば「今日は寒いですね」、「あっ、地震ですね。震源地は私です。」、「どうやらお酒が切れてきました」など、自分にあったものを見つけて下さい。
私も過去に言われました。お客さんに「手が震えてるね」。
私はこう言いました。「ハイ。指先シンドロームです。」
あまりにも訳が解らな過ぎて、静かどころではありませんでした。
すると何故か震えが止まりました。決していい例ではありませんが…。
このような経験を何度かすると、ある意味人って強くなるものです。
なので、このような経験も決して悪い訳ではありません。
◇手が震えて演じにくい時は、技法を分割して行う事が無難だと思います。例えばシークレットアディションなら、1.カードをデックに乗せる 2.少し広げてブレークを作る 3.ブレークを保ってデックを揃える 4.ブレークから上を持ち上げる これらの動作を、合間に会話を織り交ぜながら行う。
マジックを演じる上で、どうしても乗り越えないといけないのが、この“震え”ではないでしょうか。
かといって、100パーセント乗り越える事が出来ないのも、事実だと思います。
やるべき事は、いかに“震え”の起こる可能性を下げるかです。
それには“考え方”や“慣れ”が必要でしょう。
私個人の経験ですが、“技法を見せる”と言う気持ちで演じると、震えが収まった事があります。
もちろん、技法の見えてはいけない部分は見せません。
鏡の前で練習して、見せてはいけない部分が見えないように練習した“技法を見せる”と言う意味です。
それでも震えてしまうのが“人”というものです。
そんな“人”の演じるマジックを楽しむのも、また同じ“人”なのです。
TRICK STUDIO